請求書発行の業務は「経理」か「営業」か?

はじめに

企業における請求書発行業務は、売上回収に直結する重要な業務です。請求書が適切に発行されなければ、得意先からの支払いが滞り、企業の資金繰りにも影響を与えかねません。

そのため、請求書発行の責任を「経理」と「営業」のどちらが担うべきかは、業務効率や正確性の観点から重要な議論となります。本記事では、両者のメリット・デメリットを整理し、企業の成長段階に応じた最適な業務分担について考察します。

請求書発行のリスクと管理体制

請求書発行には一定のリスクが伴います。特に不正請求のリスクがあるため、厳格な管理が求められます。

リスク管理のポイント

  • 請求書の連番管理
  • 再発行の禁止(特例の場合は「再発行」と明記)
  • 会社指定の請求書用紙の使用
  • 販売管理システムによる自動発行の徹底
  • 請求印の押印者の限定
  • 複数承認(担当者印、上長印など)

これらの管理が徹底されていれば、請求書の発行部署が経理でも営業でも、業務の安全性が確保できます。

経理が請求書発行を担う場合

メリット

  1. 請求書の正確性
    • 経理は数字を扱う業務に長けており、誤記や計算ミスのリスクが低い。
  2. 営業の負担軽減
    • 請求書発行を営業から分離することで、営業が本来の業務に集中できる。
  3. 売上計上の効率化
    • 経理が請求書発行と同時に売上計上を行うことで、財務処理の一貫性が保たれる。

デメリット

  1. 請求内容の正確性に課題
    • 営業担当者ほど取引の詳細を把握していないため、請求内容の間違いが発生する可能性がある。
  2. 業務プロセスの複雑化
    • 営業からの請求依頼を受けるため、確認・修正のやり取りが増え、業務が煩雑化する。

営業が請求書発行を担う場合

メリット

  1. 請求内容の正確性が向上
    • 営業担当者が直接請求書を作成することで、取引内容の間違いを最小限に抑えられる。
  2. 業務プロセスの効率化
    • 経理への依頼・確認プロセスが不要になり、請求書発行のスピードが向上する。

デメリット

  1. 営業の業務負担増加
    • 営業が請求業務を担当すると、本来の営業活動に割く時間が減る可能性がある。
  2. 経理との整合性管理が必要
    • 売上計上と連携するために、営業と経理の情報共有が不可欠。

企業の成長段階と請求業務

企業の規模や成長段階によって、最適な請求業務の分担は異なります。

中小企業の場合

  • 営業人員に余裕がなく、営業事務も設置できないケースが多い。
  • 基幹システムが未整備で、請求書発行の管理が手作業中心。
  • 経理が請求業務を担当する方が、業務の整合性が取れやすい。

中堅企業の場合

  • 営業部に営業事務を配置できる体制が整ってくる。
  • 基幹システムを導入し、売上計上と請求書発行が自動化される。
  • 営業が請求業務を担うことで、業務のスムーズな流れが確保される。

適切な業務分担の選択肢

企業の状況に応じて、以下のような業務分担が適切となります。

中小企業向け:経理中心の請求管理

  • 経理が請求書発行を担当。
  • 営業は請求データを提供し、経理と連携。

中堅企業向け:営業部主体の請求管理

  • 営業部(営業事務を含む)が請求書発行を担当。
  • 経理は売上計上と支払管理を担当。

移行期の注意点

  • 請求業務を営業に移行する際は、システムの整備と業務フローの見直しが必要。
  • 業務の属人化を防ぐために、明確なルールを設定し、トレーニングを実施する。

まとめ

請求書発行業務は、企業の成長に応じて最適な部門が変わります。

  • 中小企業では、経理が請求業務を担うのが合理的。
  • 中堅企業では、営業部門(営業事務を含む)が請求業務を担うことで業務効率が向上。
  • 移行の際は、管理体制を強化し、システム導入を進めることでスムーズな運用が可能。

企業の業務プロセスを見直し、自社にとって最適な請求書発行体制を整えていきましょう。