企業の生産性を最大化する4つのメカニズム

生産性向上のための4つの基本戦略

企業が売上を増やすための取り組みは「需要創出」と呼ばれます。それでは、費用を減らすための取り組みは何と表現されるのでしょうか?それが「生産性向上」です。生産性とは、「投入した経営資源(ヒト・モノ・お金・情報)から、最大のアウトプット(生産量・付加価値・効用)を得ること」を意味します。

一方で、費用削減というと「コピー用紙を裏紙に使う」「昼休みに電気を消す」といった経費節約を思い浮かべる方もいるでしょう。しかし、単なる節約は生産性向上の一形態にすぎません。より広い視点で費用を見直し、削減に取り組むことが必要です。

需要創出が特定の部門(営業部、企画部、マーケティング部など)に限られるのに対し、生産性向上は全社的な取り組みです。経理部や総務部などの管理部門、製造部や生産管理部などの生産部門、営業部や販売施設を含め、すべての部署が対象となります。全社一丸となって本気で取り組むことで、生産性向上の効果は飛躍的に高まるでしょう。

しかし、生産性向上は単なるテクニックではなく、基本となる4つの型を理解し応用することが重要です。それは「投入量の最大化」「単価の最小化」「アウトプットの最大化」「アウトプットの見直し」です。これらを活用することで、あらゆる業務に応用できる基盤が整います。

1. 投入量の最大化

企業が購入した経営資源がすべて価値を生む生産に投入されているわけではありません。ムダになっている資源を見直し、生産に回すことでアウトプットを増やせます。

具体例

  • 製造業の歩留まり改善 金属加工業者が鉄板を加工する際、端材が発生する場合があります。型の改良で端材を減らせば、同じ材料からより多くの製品を生産できます。
  • 時間の有効活用 経理部員が年間1,800時間働いているとします。そのうち、1,400時間が本来の経理業務、400時間が会議や打ち合わせに費やされています。この会議時間を200時間に削減すれば、本来業務に200時間を追加投入できます。

投入量の最大化は、「間接業務」を減らし、「直接業務」にリソースを振り向けることとも言い換えられます。企業全体、各部門、個人レベルで直間比率を見直すことで、ムダを省く取り組みが可能です。

2. 単価の最小化

生産性向上の式は、「投入量 × 単価 = 最大のアウトプット」です。同じアウトプットを維持しつつ、単価を下げることでコスト削減を実現します。

具体例

  • コスト交渉 電力自由化により、企業が電力会社から相見積もりを取り、最安値プランに切り替える事例があります。また、材料や仕入れ品の価格交渉も同様に効果的です。
  • 代替手段の活用 製造業において、製品の材料を高価なアルミニウムから、同等の強度と耐久性を持つコストの低いスチールに変更することで、単価を削減することができます。例えば、アルミニウムのコストが1kgあたり500円の場合、スチールを採用することで1kgあたり300円に抑えることができれば、材料費は大幅に削減されます。

ただし、単価を下げる際は品質への影響を慎重に見極める必要があります。安価な代替品が結果的に仕上げコストを増加させることがないよう、十分なテストを行いましょう。

3. アウトプットの最大化

現在のアウトプットがすでに限界に達している場合、それを超えるのは容易ではありません。しかし、設備投資やシステム投資を通じて、アウトプットを飛躍的に増やすことが可能です。

具体例

  • 工場の最新設備導入 生産速度や品質を大幅に向上させる設備を導入する。
  • 業務のデジタル化 手作業で行っていた業務をシステム化することで、業務量を削減しつつアウトプットを増加させます。

個人レベルでは目標管理を用いることで、現状の生産性を引き上げる取り組みも有効です。目標を明確化し、それを達成するための努力を促しましょう。

4. アウトプットの見直し

不要なアウトプットに経営資源を投入し続けることは、重大なムダです。アウトプットを見直し、必要なものだけにリソースを集中させることが重要です。

具体例

  • 資料作成の見直し 毎月作成している管理資料がほとんど使われていない場合、その作成を中止するか、頻度を減らすことで時間を節約できます。
  • 定量的な効果測定 資料作成にかかるコスト(投入量 × 単価)と、それが生むベネフィットを比較します。赤字であればアウトプットを廃止または簡素化します。

利用者と作成者が対話することで、必要な範囲に見直しを行い、効率化を図ることができます。

まとめ

生産性向上には、「投入量の最大化」「単価の最小化」「アウトプットの最大化」「アウトプットの見直し」の4つの型があります。これらを適切に活用することで、あらゆる業務で効率化が進み、企業全体の競争力を向上させることが可能です。

生産性向上を考える際には、ぜひこれらの型を当てはめ、一つひとつ検証する習慣を身につけましょう。それが、持続的な改善と成長の鍵となります。