新しいリース会計(企業会計基準第 34 号「リースに関する会計基準」)は、従来の基準と大きく異なります。本記事では、リースの識別からリース期間の決定、借手と貸手の具体的な会計処理まで、ポイントを簡潔に整理しました。
会計処理
1. リースの識別
- リースの判断基準:
- 契約締結時にリースが含まれるかを判断。
- 特定資産の使用権が対価と引き換えに一定期間移転する場合はリースとみなす。
- 契約条件が変わらない限り判断を見直さない。
- リース部分の区分:借手と貸手は、リース部分と非リース部分を分けて会計処理。借手は条件次第で分けずに一括処理も選択可能。
2. リース期間の決定
- 借手のリース期間:
- 解約不能期間に以下を加える:
- 延長オプション(確実に行使される期間)。
- 解約オプション(確実に行使されない期間)。
- 解約権が借手にだけある場合は考慮する。
- 解約不能期間に以下を加える:
- 貸手のリース期間:借手のリース期間を基準とするか、再リース期間を加えるかを選択。
3. 借手の会計処理
- 使用権資産とリース負債の計上:
- リース負債は、リース料の未払い額を現在価値で算定。
- 使用権資産は、リース負債に前払いリース料や関連費用を加え、リース・インセンティブを控除して計上。
- リース料の内訳:
- 固定リース料、変動リース料、残価保証、購入オプション行使価額、解約違約金。
- 利息の配分:
- リース期間全体にわたり利息法で配分。
- 使用権資産の償却:所有権が移る場合: 通常の減価償却方法を適用。所有権が移らない場合: リース期間を耐用年数とし、残存価額はゼロ。
- 契約条件の変更:新規リースとして扱うか、既存のリース負債を見直す。期間やリース料の変更があれば負債額を再計算。
4. 貸手の会計処理
- リースの分類:
- ファイナンス・リース: 資産の経済価値をほぼ全て借手に移転。
- オペレーティング・リース: 賃貸借取引と同様に処理。
- ファイナンス・リースの詳細:
- 分類:
- 所有権移転ファイナンス・リース。
- 所有権移転外ファイナンス・リース。
- 計上方法:
- 所有権移転 → リース債権。
- 所有権移転外 → リース投資資産。
- 利息相当額:リース料と見積残存価額から資産の取得価額を引いて算定。利息法でリース期間に配分。
- 分類:
- オペレーティング・リースの詳細:賃貸借取引と同様の方法で処理。
5. ポイント
- 新リース基準は、リース取引の区分が廃止され、原則として全てのリース取引がオンバランス処理(貸借対照表に計上)となります。
- 借手はリース負債と使用権資産を管理し、貸手はリース債権またはリース投資資産として計上します。
開示
1. 表示
借手(リースを利用する企業)の表示
- 貸借対照表での表示:
- 使用権資産は以下の方法で表示する。
- 資産を自社で所有していた場合に表示する科目に含める。
- 使用権資産として有形固定資産や無形固定資産などの区分で表示。
- リース負債は以下の区分で表示:
- 1年以内に支払期限が到来するもの: 流動負債。
- 1年を超えて支払期限が到来するもの: 固定負債。
- リース負債に関する利息費用は、損益計算書で表示するか注記で記載。
- 使用権資産は以下の方法で表示する。
貸手(リースを提供する企業)の表示
- 貸借対照表での表示:
- リース債権やリース投資資産を区分して表示する。
- リース債権が少額の場合、リース投資資産とまとめて表示も可能。
- 営業目的で発生したリース債権や投資資産は流動資産として表示し、それ以外は支払期限に応じて流動資産または固定資産に区分。
- 損益計算書での表示:ファイナンス・リースの販売損益(売上高-売上原価)。リース債権やリース投資資産に関する受取利息。オペレーティング・リース収益。
2. 注記
注記の目的
- リースが企業の財務状況、経営成績、キャッシュフローに与える影響を財務諸表利用者に評価させるため、リースに関する重要な情報を開示する。
借手と貸手の注記内容
- 借手:
- 会計方針に関する情報。
- リース特有の取引情報。
- リースの金額(当期および将来の見通し)。
- 貸手:リース特有の取引情報。リースの金額(当期および将来の見通し)。
注記事項の記載方法
- 必要に応じて注記事項を簡略化することが可能。
- 他の注記事項で記載済みの内容は繰り返さず、参照を記載することで対応。
3. 適用時期
- 適用開始:
2027年4月1日以降開始する会計年度から適用。- 早期適用は2025年4月1日以降の会計年度から可能。
用語
基本的な用語
- 契約: 複数の当事者間で法的な権利と義務を発生させる取り決め。書面、口頭、取引の慣行も含まれる。
- リース: 特定の資産を一定期間使う権利を、対価と引き換えに渡す契約。
- 借手: リース契約で資産を使用する権利を得る企業。
- 貸手: リース契約で資産を使用する権利を提供する企業。
- 原資産: リース契約で使う対象の資産。
- 使用権資産: 借手がリース期間中に使う権利として記録される資産。
リースの種類
- ファイナンス・リース: 借手が資産の経済的利益を実質的に得て、コストも負担するリース。途中解約ができない。
- 所有権移転ファイナンス・リース: リース終了後に資産の所有権が借手に移るリース。
- 所有権移転外ファイナンス・リース: 所有権が移らないファイナンス・リース。
- オペレーティング・リース: ファイナンス・リース以外のリース。
期間や条件に関する用語
- 借手のリース期間: 借手が資産を使える解約できない期間+延長や解約オプションが含まれる期間。
- 貸手のリース期間: 貸手が選ぶリースの期間。借手のリース期間や再リース期間が含まれる。
- 再リース期間: 資産を再リースする契約での期間。
リース料関連の用語
- リース開始日: 貸手が借手に資産の使用を可能にする日。
- 借手のリース料: 借手が資産使用の対価として支払う金額。固定、変動、購入オプション、解約違約金などが含まれる。
- 固定リース料: 支払い額が一定のもの。
- 変動リース料: 料金が条件によって変動するもの。
- 貸手のリース料: リース契約で貸手が受け取る料金。残価保証を含む。
その他
- 残価保証: リース終了時、資産の価値が契約で決めた額より少ない場合、貸手にその差額を保証する仕組み。
- リースの契約条件の変更: リース範囲や料金の変更(資産の追加や解約、期間の延長や短縮など)。