企業の予算管理において、経費コントロールは重要な役割を果たします。特に中堅企業では、部門ごとの経費管理が経営の効率化に直結します。しかし、配賦(経費の按分)に関しては、誰が責任を負うべきかが曖昧になりがちです。本記事では、予算管理の本質を見直し、配賦の問題点とその解決策を解説します。
1. 経費コントロールの基本とは?
予算管理の目的の一つは、適切な経費コントロールです。管理者は部門のコストを抑え、可能であれば予算よりも少なくすることが求められます。そのために、経費が発生する前に適切な行動を取る必要があります。
① 経費を抑えるために管理者ができること
- 不要不急の経費を削減する:
- 部門内で本当に必要な経費かを見極め、優先順位をつける。
- 申請された経費を精査し、先送りできるものは延期する。
- コスト交渉を行う:
- 仕入れ価格の交渉を行い、1〜2%でも削減できる努力をする。
- まとめ買いのメリットを活かしつつ、無駄な在庫を抱えないよう調整する。
- 購買数量を適正化する:
- 必要以上の予備を確保していないかチェックする。
- 本当に全量が必要かを精査し、適正な発注を行う。
これらの施策は、物品やサービスを発注する前にしか実行できません。一度発注してしまうと、削減の余地はほとんどなくなってしまいます。
2. 配賦の問題点:誰も責任を取らない仕組み
経費コントロールの観点から見ると、配賦には大きな問題があります。それは、「発生部門」と「負担部門」の両方が、コスト削減に対して本気にならない点です。
① 配賦とは何か?
例えば、総務部が全社で使用するコピー用紙をまとめて購入した場合、
- 購入時点では総務部の経費となる
- 使用実態が不明なため、各部門の人数比で按分される
このような処理は一般的に行われていますが、実際にはどの部門もコスト削減のインセンティブを持ちません。
② 負担部門の問題
配賦された経費を受け取る部門は、コスト削減の努力ができません。
- コピー用紙の使用を減らすことは現実的に難しい。
- 部門の人数が減らない限り、配賦額を下げることはできない。
- 結果として、経費は削減されず、そのまま受け入れるしかない。
③ 発生部門(購買部門)の問題
一方、購買を担う部門(例:総務部)は、
- 価格交渉や発注数の適正化といった努力をする余地がある。
- しかし、最終的に経費は他の部門へ配賦されるため、自部門の負担にはならない。
- つまり、コスト削減の動機が弱い。
この結果、「配賦される経費」に関しては、どの部門も積極的なコスト削減を行わない状況が生まれます。
3. 配賦の問題を解決するには?
① 発生部門にコスト管理の責任を持たせる
最も重要なのは、「配賦される経費」の責任を明確にし、発生部門にコスト管理のインセンティブを持たせることです。
- 配賦ルールを見直し、発生部門に一定の負担を持たせる
- 購買部門の評価指標に、コスト削減の取り組みを含める
- 発注基準を厳格化し、適正なコスト管理を徹底する
② 配賦を最小限に抑える仕組みを作る
配賦は本来、便宜上行うものですが、過度な配賦は部門間の対立を生み、適切なコスト管理を妨げます。
- 各部門が直接経費を負担する仕組みに移行する
- 部門別の購買ルールを設定し、発注権限を最適化する
- 不要な配賦項目を整理し、シンプルな管理にする
③ 経費削減の取り組みを可視化する
コスト削減の成果が適切に評価される仕組みを作ることで、発生部門の購買責任を強化できます。
- 購買履歴を公開し、価格交渉の努力が見える化されるようにする
- 削減努力が評価に反映されるようなインセンティブを導入する
- コスト削減目標を部門ごとに設定し、適正な購買を促す
4. まとめ:責任の所在を明確にすることが鍵
中堅企業の予算管理における配賦の問題は、発生部門と負担部門のどちらもコスト削減のインセンティブを持たないことにあります。
解決策のポイント
- 発生部門に一定のコスト負担を持たせ、削減のインセンティブを作る
- 配賦を最小限に抑え、各部門が直接コストを管理できるようにする
- 経費削減の取り組みを可視化し、評価制度に組み込む
このような仕組みを導入することで、単なる経費の付け替えではなく、企業全体のコスト削減意識を高めることが可能になります。今こそ、配賦の仕組みを見直し、より健全な予算管理を目指しましょう。