安い時代の終わり⑤ 顧客を選ぶ会社が勝つ

「お客様は選べない。」そう考えている経営者は少なくありません。

仕事をいただけるだけありがたい。売上が減るよりはまし。どんな案件でも受けた方が良い。そうした考え方は長い間、日本企業の常識でした。

しかし、これからの時代も同じ考え方でよいのでしょうか。私はそうではないと思います。

むしろこれからは、顧客を選べる会社ほど強くなる時代だと考えています。

すべての顧客を大切にすることは正しいのか

もちろん顧客を大切にすることは重要です。しかし、すべての顧客が同じ価値をもたらしているわけではありません。

例えば、毎回値引きを要求する顧客。頻繁に仕様変更を行う顧客。少額案件を大量に依頼する顧客。クレーム対応に多くの時間を要する顧客。

こうした顧客は売上には貢献していても、利益には貢献していない可能性があります。にもかかわらず、多くの企業では売上だけで顧客を評価しています。

結果として、忙しいのに儲からないという状態に陥ります。

売上の大きい顧客が優良顧客とは限らない

経営会議ではよく、「A社向け売上が増えた」という話題が出ます。しかし本当に見るべきなのは売上でしょうか。

例えば、年間売上1億円の顧客と、年間売上3,000万円の顧客がいたとします。ところが実際には、1億円の顧客は

  • 頻繁な値引き
  • 多くの個別対応
  • 特別仕様
  • 短納期要求

を繰り返している。一方、3,000万円の顧客は

  • 標準サービスを利用
  • 支払いも良好
  • 問い合わせも少ない

という場合があります。このとき利益は逆転しているかもしれません。売上は大きくても、会社を疲弊させている顧客は存在するのです。

資源が不足する時代の顧客戦略

これまでの時代は、顧客を増やすことが重要でした。しかし今後は、顧客を選ぶことが重要になります。

なぜなら、企業が持つ資源は限られているからです。営業担当者の時間。技術者の工数。製造能力。物流能力。これらは無限ではありません。

限られた資源を使う以上、どの顧客に投資するのかを決める必要があります。

強い会社は顧客を選んでいる

実は利益率の高い企業ほど、顧客選択を行っています。

すべての顧客を追いかけません。すべての案件を受注しません。自社の強みを発揮できる顧客に集中します。

逆に、利益が出ない案件は断ることもあります。一見すると勇気のいる判断です。しかし資源制約の時代には、断る能力こそが競争力になります。

顧客別利益を把握しているか

ここで重要になるのが、顧客別利益です。多くの企業は顧客別売上を把握しています。しかし顧客別利益までは把握していません。

その結果、売上の大きい顧客を優良顧客だと思い込んでいます。しかし本当に見るべきなのは、どの顧客が利益を生み出しているかです。

顧客ごとの対応工数。営業工数。配送コスト。サポートコスト。こうした情報を含めて初めて顧客の採算が見えてきます。

「誰に売るか」が経営戦略になる

高度成長期の経営戦略は、どうやって多くの顧客を獲得するかでした。

しかし今後は違います。誰に売るのか。誰に売らないのか。その選択が経営戦略になります。

限られた人材。限られた設備。限られた時間。それらを最も価値の高い顧客へ投入する。これが資源制約時代の経営です。

良い顧客は会社を強くする

顧客は売上をもたらします。しかし本当に重要なのは、利益をもたらす顧客です。

さらに言えば、会社の強みを活かせる顧客です。そのような顧客が増えるほど、企業は安定し、利益率も高まり、社員の負担も減ります。

これからの時代は、顧客の数を競う時代ではありません。顧客の質を競う時代です。

次回予告

次回は、「価格競争から価値競争へ」をテーマに考えます。

資源が限られる時代において、なぜ安売りが経営を苦しくするのか。

そして価格ではなく価値で選ばれる企業になるためには何が必要なのかを考えていきます。