「原価計算は経理がやるもの。」多くの会社ではそう考えられています。
月次決算のため。棚卸資産評価のため。製造原価報告書を作るため。確かにこれらは原価計算の重要な役割です。
しかし、これからの時代において、原価計算の意味は大きく変わると私は考えています。
原価計算は会計処理のためではありません。経営判断のための情報になるのです。
なぜ原価計算は軽視されてきたのか
高度成長期から現在に至るまで、多くの企業では売上拡大が最優先でした。
市場は伸びる。顧客は増える。受注は確保できる。その環境では、「どれだけ売るか」が重要でした。
もちろん利益も大切です。しかし売上が伸び続ける環境では、多少採算が悪くても全体として利益を確保できました。
そのため原価計算は、経営の中心ではなく、経理部門の仕事として扱われてきたのです。
資源制約時代に何が変わるのか
しかし今は違います。人材は限られている。設備能力も限られている。原材料も不足する。エネルギーコストも上昇する。つまり、経営資源が限られているのです。
すると経営者は、何を作るのか。誰に売るのか。どの仕事を受けるのか。という選択を迫られます。
そして、その判断に必要なのが原価情報です。
売上では判断できない
例えば、
A案件
- 売上1,000万円
B案件
- 売上700万円
売上だけを見るとA案件を選びたくなります。
しかし実際には、A案件は多くの人手を必要とし、頻繁な仕様変更があり、利益率が低い。
一方でB案件は、少ない工数で高い利益を生み出している。そんなことは珍しくありません。売上だけでは判断できないのです。
原価は「資源消費量」を表している
原価という言葉を聞くと、多くの人はお金を思い浮かべます。しかし本質は違います。
原価とは、経営資源の消費量です。
- 人の時間
- 設備の稼働時間
- 原材料
- エネルギー
- 外注費
これらをどれだけ使ったのか。それを表現したものが原価です。つまり原価計算とは、資源配分を可視化する仕組みなのです。
利益が出ない理由は見えているか
売上は増えている。忙しい。現場も頑張っている。それでも利益が出ない。こうした会社は少なくありません。
しかし、なぜ利益が出ないのかまで把握している企業は意外に少ないのです。
どの顧客が利益を生んでいるのか。どの商品が利益を生んでいるのか。どの業務が利益を失わせているのか。
これが見えなければ、改善もできません。
原価計算は経営のレーダーになる
飛行機は窓から外を見て飛んでいるわけではありません。計器を見ながら飛んでいます。
経営も同じです。売上だけを見ている状態は、高度計も燃料計も見ずに飛んでいるようなものです。
今どれだけ利益が出ているのか。どこで利益を失っているのか。どこに資源を投入すべきなのか。それを示してくれるのが原価計算です。
これからの原価計算は現場から始まる
原価計算というと、経理システムや会計ソフトをイメージするかもしれません。
しかし本当に重要なのは現場です。誰が何時間使ったのか。どの工程に工数がかかったのか。どの業務が非効率なのか。こうした情報がなければ、正しい原価は見えません。
つまり原価計算は、経理のためではなく、現場と経営をつなぐ仕組みなのです。
原価計算は競争力になる
安い時代には、売上を伸ばせば成長できました。しかし資源制約時代には、限られた資源をどこへ配分するかが競争力になります。
そしてその判断を支えるのが原価情報です。原価計算は決算資料を作るためのものではありません。経営資源を最適に配分するための仕組みです。
私はこれから、原価計算が経理部門の仕事から経営の仕事へ変わっていくと考えています。
次回予告
次回は、「KPIも変わる」をテーマに考えます。
売上高。受注件数。生産量。これまで重要だった指標が、本当に経営に必要な数字なのでしょうか。
資源制約時代に経営者が見るべき数字について考えていきます。