社内価格が生む対立とその解決策

社内における価格決定は、企業運営の中でしばしば対立の火種となります。特に製造部門と営業部門の間で「社内価格」を巡る議論が絶えないのは、多くの企業に共通する課題です。この記事では、社内価格がもたらす対立の構造を整理し、より合理的な価格決定プロセスについて考えます。

社内価格とは何か?

社内価格とは、製造部門と営業部門の間で取り交わされる仕切り価格のことを指します。企業によって「基準値」「見積原価」「標準原価」など様々な呼び方がありますが、基本的には営業が販売価格を決定する際の「原価基準」となり、製造部門にとっては「生産高」の指標となります。

しかし、この社内価格が営業と製造の間で異なるインセンティブを生み出し、時には深刻な対立を引き起こします。

営業と製造、それぞれの視点

営業部門の視点

営業にとって社内価格はできるだけ低いほうが望ましいです。その理由は次のようなものがあります。

  1. 見積価格の競争力:社内価格が低ければ、それに基づく販売価格も低く設定でき、受注獲得の可能性が高まります。
  2. 個人成績への影響:営業の業績評価が受注粗利に基づいている場合、社内価格が低いほど粗利が大きくなり、成績が良くなります。

製造部門の視点

一方、製造部門は社内価格が高いほど有利です。

  1. 生産高の増加:社内価格が高ければ、同じ生産量でも金額ベースでの生産高が増えます。
  2. 原価差異の管理:社内価格が実際の原価よりも高い場合、有利差異が発生し、製造部門の評価にプラスに働くことがあります。

このように、営業は社内価格を下げたい、製造は上げたいという対立構造が生まれるのです。

社内価格にとらわれない価格決定が重要

企業全体として考えたとき、最も重要なのは「販売価格と実際原価の差」である利益の確保です。社内価格が高かろうが低かろうが、最終的な利益には影響を与えません。そのため、営業と製造が社内価格を巡って争うことは生産的とは言えません。

しかし、多くの企業では「社内価格を下回る価格での受注禁止」など、社内価格を絶対視するルールを設けています。これは、社内価格が市場価格と乖離してしまう原因となり、結果として営業の価格調整の自由度を奪うことにつながります。

解決策:社内価格を目的化しない

社内価格を巡る対立を解消するには、次のポイントを押さえることが重要です。

  1. 社内価格をあくまで原価基準として位置づける
    • 社内価格を市場価格と連動させるのではなく、純粋に製造原価を基準とした価格とする。
  2. 価格決定の最終基準は市場価格とする
    • 営業が市場価格を考慮して価格設定できる柔軟なルールを設ける。
  3. 社内価格を評価指標にしない
    • 営業と製造の業績評価において、社内価格の影響をできる限り排除し、企業全体の利益に基づく評価基準を整備する。

まとめ

社内価格は営業と製造の対立を生む大きな要因となることがあります。しかし、それは企業全体の利益に直接結びつくものではなく、あくまで内部の仕組みに過ぎません。価格決定の本質は市場競争にあり、社内価格を目的化するのではなく、企業の競争力を高めるための合理的なプロセスを構築することが重要です。

営業と製造が対立するのではなく、協力しながら企業全体の利益を最大化する価格戦略を考えていくことが求められます。