経営が厳しくなってくると、多くの経営者は「どう立て直すか」だけを考えがちです。売上を増やす、コストを下げる、資金をつなぐ。もちろん、それらは重要です。
しかし、ある段階を超えると、「どう続けるか」だけでなく、「どう終えるか」も同時に考える必要が出てきます。これは決して後ろ向きな話ではありません。むしろ、経営者にしかできない、極めて責任の重い判断です。
出口戦略は「失敗の話」ではない
日本では、撤退や清算、事業譲渡といった話題は、どうしてもネガティブに受け取られがちです。
- 続けられなかった
- 負けた
- 失敗した
しかし、現実の経営現場で見ると、最も問題になるのは「決断が遅れること」です。資金が尽き、取引先や従業員に迷惑をかけ、選択肢が何も残らなくなった状態での倒産。これこそが、最悪の出口です。
出口戦略とは、倒産を避けるために、選択肢があるうちに考えるものです。
「続けること」自体が目的になっていないか
経営者と話していると、次のような言葉を聞くことがあります。
- もう少し続けられると思う
- ここまでやってきたのだから
- 自分が辞めたら申し訳ない
これらは、とても人間的な感情です。しかし、感情だけで判断を引き延ばすと、
結果的に関係者全員を苦しめることになります。重要なのは、会社を続けること自体が目的になっていないかを、一度立ち止まって考えることです。
出口戦略には、いくつかの現実的な選択肢がある
出口戦略と一口に言っても、必ずしも「会社を畳む」だけではありません。状況によって、次のような選択肢があります。
- 事業の一部を譲渡する
- 会社ごと第三者に引き継ぐ
- 規模を極端に絞って存続させる
- 計画的に清算する
大切なのは、自社にとって取り得る選択肢を、冷静に洗い出すことです。
事業譲渡・会社売却という選択
後継者がいない、これ以上の立て直しが難しい。そうした場合でも、事業そのものに価値が残っていることは少なくありません。
- 顧客基盤
- 技術やノウハウ
- 人材
- 地域での信頼
これらは、別の会社にとって魅力的な資産になり得ます。早い段階であれば、
雇用を守ったまま引き継ぐという選択肢も見えてきます。
清算は「逃げ」ではない
どうしても続けられない場合、計画的な清算という選択もあります。ここで重要なのは、資金が残っているうちに動くことです。
- 借入の整理
- 従業員への説明
- 取引先との調整
これらを段階的に進めることで、関係者へのダメージを最小限に抑えることができます。何も決めずに時間だけが過ぎることが、最もリスクの高い状態です。
社長の年齢と体力は、無視できない要素
出口戦略を考えるうえで、社長自身の年齢や体力は、非常に重要です。
- 60代後半以降
- 後継者がいない
- 現場から離れられない
この状態で、数年単位の再建を前提にするのは、現実的とは言えないケースも多くあります。これは能力の問題ではなく、時間とエネルギーの問題です。
最悪なのは「何も決めないこと」
出口戦略を考えることは、勇気のいる作業です。
- 従業員にどう説明するか
- 周囲にどう見られるか
- 自分自身がどう感じるか
それでも、決断を先送りし続けることが、最も大きなリスクになります。選択肢があるうちに考える。これが、経営者としての責任です。
出口戦略は「経営の一部」である
続けるか、引き継ぐか、終えるか。これらはすべて、経営の延長線上にある判断です。出口戦略を考えることは、これまで積み上げてきたものを、どう次につなぐかを考える行為でもあります。
潰す前に考える。資金が残っているうちに考える。気力と判断力があるうちに考える。それができるかどうかが、最後に会社を守れるかどうかを分けることになります。
出口戦略は、決して特別な話ではありません。これからの中小企業経営において、
誰もが向き合うべき、現実的なテーマです。