システム構築を成功させるためには、「要件定義」よりも前に全体構想を策定し、経営視点を取り入れることが重要です。その中でも、未来の予測情報を活用できる仕組みを作ることで、より戦略的な経営判断が可能になります。
企業は過去のデータを活かして、より正確な未来予測を行い、経営戦略を最適化することができます。しかし、多くの企業では予測情報をうまく活用できておらず、せっかくのデータが戦略に結びついていません。本記事では、予測情報を取得・活用するためのシステム構想について解説します。
予測情報をシステム化する意義
予測情報を適切にシステムに組み込むことで、経営判断の精度を向上させ、業務の効率化を実現できます。
1 未来の支出や収益を可視化する
例えば、以下のようなデータを組み合わせることで、将来の支出や収益の予測が可能になります。
- 債権管理 + 購買管理のデータ → 数か月先の支払金額の予測
- 営業部門の見込み受注データ → 受注に基づいた生産計画の最適化
- 過去の売上・販促データ → 販売促進活動の効果予測
このように、予測情報をもとに戦略的な意思決定を行うことで、無駄なコストを削減し、収益を最大化することができます。
2 データのリアルタイム可視化
企業の規模や業種によっては、すべての情報をリアルタイムで管理する必要がない場合もあります。そのため、何の情報を拾い、どの情報を切り捨てるかを見極めることが重要です。
- グローバル企業 → 海外含めリアルタイムのデータ可視化が必要
- 中堅企業・ベンチャー → 必要な情報に絞り、コストを抑えて予測システムを構築
このように、企業の特性に応じたデータ活用を行うことが、効率的なシステム構築につながります。
情報の性質を理解する
企業が持つデータには、正確性が求められる情報と、大まかで良い情報の2種類があります。
1 正確性が求められる情報
- 過去データ（年度決算、税務申告、決算短信）
- 未来データ（中期経営計画、IR情報）
これらのデータは、正確性が求められるため、1円単位での精密な管理が必要です。
2 ざっくりでよい情報
- 過去データ（月次決算、予実管理、配賦機能）
- 未来データ（3か月先の売上予測、受注前の利益予測）
経営管理のための情報は、完璧な正確性よりも、スピード感を持って把握することが重要です。そのため、予測情報を扱うシステムは、スピーディーにデータを取得できる仕組みが求められます。
例えば、受注前の利益予測をリアルタイムで計算する場合、1円単位の精度よりも、大まかな傾向を即座に把握できるほうが経営判断に役立ちます。
予測情報を活用するためのシステム構築
1 予測に必要なデータを選定する
予測を行う際に有効なデータには、次のようなものがあります。
- 見込案件の件数・金額
- 過去の業績データ（前年同期比較）
- 仕入先の支払条件
- 営業・生産・財務の各部門からのリアルタイムデータ
このようなデータを集約し、経営に役立つ情報を抽出する仕組みを構築します。
2 部門間のデータ共有を促進する
予測情報の精度を高めるためには、部門間のデータ連携が不可欠です。しかし、営業・生産・財務などの部門間でデータの重要性に対する認識が異なり、情報共有が進まないケースもあります。
例えば、営業部門は「確定した売上」を重視しますが、経営視点では「見込み受注」も戦略的な意思決定に役立ちます。このようなデータ共有の重要性を認識し、システム構築時に要件定義へ反映させることが重要です。
- 営業部門：見込み受注データを提供
- 生産部門：受注予定をもとに生産計画を調整
- 財務部門：予測データを基に資金繰り計画を策定
このように、経営視点で全社のメリットを考え、データ共有の仕組みをシステムに組み込むことが重要です。
まとめ
予測情報をシステムに組み込むことで、経営判断のスピードと精度を向上させることができます。そのためには、次のポイントを意識することが重要です。
- 未来の支出や収益を可視化し、戦略的な意思決定に活用する
- 正確性が求められる情報と、大まかで良い情報を区別する
- 経営視点で部門間のデータ共有を促進し、全社最適を目指す
システム構想の段階でこれらを検討することで、企業の競争力を強化し、より効果的な経営戦略を実現できます。