金融危機は「資金の血流」が止まるとき
景気後退や金融システム不安が表面化すると、企業経営は一気に難しくなります。その理由は明確です。資金調達が思い通りにいかなくなるからです。
- 銀行は新規の貸し出しを控える
- これまで当然のように応じていた借り換えに、突然応じなくなる
- 既存融資の回収を急ぐケースすらある
つまり、これまでの資金繰りの常識が通じなくなるのが「金融危機」の本質です。
危機が近づいたら、まずは資金を潤沢に
金融危機の兆候が出始めたら、経営者が取るべき行動は明確です。
- 借りられるうちに借入を増やす
いざ必要なときに借りられなくなる前に、資金を厚めに確保しておく。 - 短期から長期へ切り替える
短期借入金や当座借入は、危機下で更新拒否されるリスクが高い。長期借入や社債へ切り替え、資金の安定性を高める。 - リスク資産・遊休資産を現金化する
眠っている資産を現金に換えることが、何よりのリスクヘッジとなる。
守りの経営が第一 ― 投資や在庫は抑える
金融危機下では、攻めよりも守りを重視するのが普通の会社にとって賢明です。
- 新規投資は延期または縮小する
- 在庫仕入れは慎重に行い、回転率を重視する
- 現金比率を高めることで安全性を確保する
現金を厚く持っておくことこそ、金融危機を乗り切るための「酸素ボンベ」なのです。
一部の企業だけができる「攻めの戦略」
一方で、資金が潤沢な大企業やキャッシュリッチな企業の中には、金融危機を逆にチャンスと捉えるケースもあります。
- ライバルが投資を止めた隙に新規投資を行う
- 価格が下がったタイミングで積極的に在庫を仕入れる
こうした戦略が可能なのは、もともと現金比率が非常に高い企業に限られます。資金余力のない会社が無理に真似をすると、資金ショートに直結しかねません。
まとめ ― 金融危機は「資金防衛戦」
金融危機は、企業にとって経営環境そのものを揺るがす「非常時」です。資金調達が当たり前にできる平常時とは全く違う世界が訪れます。
だからこそ経営者は、
- 借りられるうちに借りる
- 長期資金に切り替える
- 現金比率を高めておく
という備えを怠ってはいけません。
「金融危機をチャンスに」と語られる華やかな事例に惑わされず、まずは自社を守るための資金防衛戦に徹すること。これが普通の会社にとって最も現実的で、確実な危機対応なのです。