「競合が安いので値下げしました。」
経営会議でよく聞く言葉です。しかし、私は最近こう感じることがあります。安売りで勝てる時代は終わりつつあるのではないか、と。
もちろん価格は重要です。同じ価値であれば安い方が選ばれます。
しかし、これからの時代において価格だけを武器に戦い続けることは、ますます難しくなるでしょう。
なぜなら、企業自身が安く提供し続けることが難しくなっているからです。
安売りが成立した時代
これまで多くの企業は、より安く作る、より安く仕入れる、より安く売る、という競争を続けてきました。
大量生産。大量販売。規模の経済。効率化。これらによって価格を下げ、市場シェアを獲得してきました。
実際、それは非常に有効な戦略でした。市場が拡大し続ける環境では、価格競争は成長戦略でもあったのです。
しかし安くできる条件が失われている
現在、多くの企業が直面している問題は、コストの上昇です。
人件費。物流費。エネルギーコスト。原材料費。
かつては削減できたコストが、今では構造的に上昇しています。つまり、企業自身が安く作れなくなっているのです。
にもかかわらず、価格だけで競争しようとすると何が起きるでしょうか。
利益が削られます。投資余力が失われます。人材確保も難しくなります。
結果として企業の競争力そのものが弱くなっていきます。
なぜ価格競争は終わりがないのか
価格競争には大きな問題があります。それは、必ず誰かがもっと安くする、ということです。
ある会社が価格を下げる。競合も下げる。さらに別の競合が下げる。こうして利益だけが失われていきます。
そして最終的には、誰も十分な利益を得られなくなります。価格競争は勝者を作るように見えて、市場全体を疲弊させることが少なくありません。
顧客は本当に価格だけで選んでいるのか
ここで一度考えてみたいことがあります。私たちは普段、本当に価格だけで商品やサービスを選んでいるでしょうか。
例えば、納期が早い。品質が安定している。相談しやすい。トラブル対応が早い。専門知識が豊富。こうした理由で取引先を選ぶことは少なくありません。
つまり顧客が購入しているのは、商品そのものではなく価値です。価格はその一部に過ぎません。
価値を高める企業が選ばれる
これからの時代に重要になるのは、どうやって安く売るかではなく、なぜその価格で買ってもらえるのか、です。
例えば、
- 専門性が高い
- 品質が高い
- 提案力がある
- 対応が早い
- 顧客の課題を解決できる
こうした価値を提供できる企業は、価格以外の理由で選ばれます。そして価格競争から抜け出すことができます。
値上げできる会社が強い
資源制約の時代において、最も強い企業の一つの特徴は、価格決定権を持っていることです。
単に高く売るという意味ではありません。顧客が納得して購入してくれる価値を提供できることです。
値上げができる会社は、利益を確保できます。利益があれば、人材へ投資できます。設備へ投資できます。新しいサービスを開発できます。
つまり、価値を提供できる企業ほどさらに強くなるのです。
利益率は価値の結果である
経営者は利益率を気にします。しかし利益率は結果です。原因ではありません。
利益率が高い企業は、顧客に認められる価値を提供しています。利益率が低い企業は、価格以外の差別化が難しい状況にあります。
つまり、利益率改善とは、単なるコスト削減ではなく、価値向上の活動なのです。
これから問われるのは「何を売るか」ではない
これまでの経営は、何を売るかを考えることが中心でした。しかしこれからは、なぜ顧客が選ぶのかを考えることが重要になります。
価格ではなく価値。安さではなく存在意義。企業が提供する価値そのものが競争力になる時代です。
次回予告
次回は、「規模より利益率が重要になる」をテーマに考えます。
売上規模の大きな会社が強いとは限らない時代が始まっています。これからの経営者が見るべき数字は何なのか。
規模の経営から収益性の経営への転換について考えていきます。