安い時代の終わり⑩ KPIも変わる

経営者は数字を見て経営します。

売上高。受注件数。生産数量。稼働率。顧客数。こうした数字は、どの会社でも管理されているでしょう。

しかし、ここで一つ考えてみたいことがあります。その数字は、本当に会社を良くするための数字でしょうか。

それとも、過去の時代の成功体験を測るための数字でしょうか。

資源制約の時代に入りつつある今、私はKPIそのものを見直す必要があると考えています。

KPIは経営の価値観を表している

KPIとは単なる数字ではありません。会社が何を重視しているかを示すものです。

例えば、

売上高を重視する会社は、売上を増やす行動を取ります。

受注件数を重視する会社は、案件数を増やそうとします。

稼働率を重視する会社は、人や設備を常に埋めようとします。

つまり、KPIは社員の行動を決めるのです。だからこそ、時代が変わればKPIも変わらなければなりません。

売上高は本当に重要なのか

売上は重要です。しかし売上だけでは会社の強さは分かりません。

例えば、売上が10%増えた。しかし利益は減った。そんな企業は少なくありません。

売上だけを見ると成功です。利益を見ると失敗です。どちらが正しいのでしょうか。

資源制約の時代においては、利益を生まない売上は価値を持ちません。むしろ貴重な経営資源を消費している可能性があります。

稼働率100%は理想なのか

製造業でもサービス業でも、稼働率は重要な指標です。

しかし、稼働率100%は本当に良い状態なのでしょうか。実はそうとも限りません。

設備が常にフル稼働。社員も常に残業。スケジュールに余裕がない。

この状態では、新しい仕事を受けられません。トラブルにも対応できません。改善活動もできません。

短期的には効率的に見えても、長期的には脆弱な組織になります。

「量」を測るKPIから「価値」を測るKPIへ

これまでのKPIの多くは、量を測るものでした。

  • 売上高
  • 生産数量
  • 顧客数
  • 受注件数
  • 稼働率

いずれも「どれだけ増えたか」を見る指標です。

しかしこれからは、「どれだけ価値を生み出したか」を見る必要があります。

例えば、

  • 営業利益率
  • 顧客別利益
  • 商品別利益
  • 一人当たり利益
  • 時間当たり利益

こうした指標です。

一人当たり利益という考え方

人手不足が続く時代には、人を増やすことが難しくなります。

すると重要になるのは、一人当たりの売上ではなく、一人当たりの利益です。

なぜなら、利益が企業の投資原資になるからです。人材育成も。給与引き上げも。設備投資も。すべて利益から生まれます。

つまり、人をどれだけ有効に活用できているかが重要になるのです。

顧客別利益を見ているか

第5回で顧客選択について触れました。その判断を支えるのもKPIです。

顧客別売上は見ている。しかし顧客別利益は見ていない。そんな会社は少なくありません。

売上だけを見ていると、利益の出ない顧客に貴重な時間を使い続けることになります。

これからは、誰が売上を作っているかではなく、誰が利益を作っているかを見る必要があります。

KPIは資源配分のためにある

KPIの本当の目的は、評価ではありません。資源配分です。

どこに人を投入するか。どの商品に投資するか。どの顧客を優先するか。どの事業を伸ばすか。

その判断を支えるためにKPIがあります。つまり、KPIとは経営者の意思決定を支援するための道具なのです。

量の時代のKPIから卒業する

高度成長期には、量を追うKPIが合理的でした。市場は拡大し、作れば売れたからです。

しかし資源制約時代には、利益率。付加価値。資源効率。こうした視点が重要になります。

量の管理から、価値の管理へ。KPIもまた、時代に合わせて進化しなければならないのです。

次回予告

次回は、「ERP導入の目的が変わる」をテーマに考えます。

多くの企業は効率化や省力化を目的にERPを導入します。しかし資源制約時代において、本当に必要なのは効率化だけなのでしょうか。

ERPの役割そのものが変わり始めていることについて考えていきます。