経営者は数字を見て経営します。
売上高。受注件数。生産数量。稼働率。顧客数。こうした数字は、どの会社でも管理されているでしょう。
しかし、ここで一つ考えてみたいことがあります。その数字は、本当に会社を良くするための数字でしょうか。
それとも、過去の時代の成功体験を測るための数字でしょうか。
資源制約の時代に入りつつある今、私はKPIそのものを見直す必要があると考えています。
KPIは経営の価値観を表している
KPIとは単なる数字ではありません。会社が何を重視しているかを示すものです。
例えば、
売上高を重視する会社は、売上を増やす行動を取ります。
受注件数を重視する会社は、案件数を増やそうとします。
稼働率を重視する会社は、人や設備を常に埋めようとします。
つまり、KPIは社員の行動を決めるのです。だからこそ、時代が変わればKPIも変わらなければなりません。
売上高は本当に重要なのか
売上は重要です。しかし売上だけでは会社の強さは分かりません。
例えば、売上が10%増えた。しかし利益は減った。そんな企業は少なくありません。
売上だけを見ると成功です。利益を見ると失敗です。どちらが正しいのでしょうか。
資源制約の時代においては、利益を生まない売上は価値を持ちません。むしろ貴重な経営資源を消費している可能性があります。
稼働率100%は理想なのか
製造業でもサービス業でも、稼働率は重要な指標です。
しかし、稼働率100%は本当に良い状態なのでしょうか。実はそうとも限りません。
設備が常にフル稼働。社員も常に残業。スケジュールに余裕がない。
この状態では、新しい仕事を受けられません。トラブルにも対応できません。改善活動もできません。
短期的には効率的に見えても、長期的には脆弱な組織になります。
「量」を測るKPIから「価値」を測るKPIへ
これまでのKPIの多くは、量を測るものでした。
- 売上高
- 生産数量
- 顧客数
- 受注件数
- 稼働率
いずれも「どれだけ増えたか」を見る指標です。
しかしこれからは、「どれだけ価値を生み出したか」を見る必要があります。
例えば、
- 営業利益率
- 顧客別利益
- 商品別利益
- 一人当たり利益
- 時間当たり利益
こうした指標です。
一人当たり利益という考え方
人手不足が続く時代には、人を増やすことが難しくなります。
すると重要になるのは、一人当たりの売上ではなく、一人当たりの利益です。
なぜなら、利益が企業の投資原資になるからです。人材育成も。給与引き上げも。設備投資も。すべて利益から生まれます。
つまり、人をどれだけ有効に活用できているかが重要になるのです。
顧客別利益を見ているか
第5回で顧客選択について触れました。その判断を支えるのもKPIです。
顧客別売上は見ている。しかし顧客別利益は見ていない。そんな会社は少なくありません。
売上だけを見ていると、利益の出ない顧客に貴重な時間を使い続けることになります。
これからは、誰が売上を作っているかではなく、誰が利益を作っているかを見る必要があります。
KPIは資源配分のためにある
KPIの本当の目的は、評価ではありません。資源配分です。
どこに人を投入するか。どの商品に投資するか。どの顧客を優先するか。どの事業を伸ばすか。
その判断を支えるためにKPIがあります。つまり、KPIとは経営者の意思決定を支援するための道具なのです。
量の時代のKPIから卒業する
高度成長期には、量を追うKPIが合理的でした。市場は拡大し、作れば売れたからです。
しかし資源制約時代には、利益率。付加価値。資源効率。こうした視点が重要になります。
量の管理から、価値の管理へ。KPIもまた、時代に合わせて進化しなければならないのです。
次回予告
次回は、「ERP導入の目的が変わる」をテーマに考えます。
多くの企業は効率化や省力化を目的にERPを導入します。しかし資源制約時代において、本当に必要なのは効率化だけなのでしょうか。
ERPの役割そのものが変わり始めていることについて考えていきます。