経営者は、管理とシステムにどう関わるべきか~第3回 経営者が手放してはいけない四つの判断

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管理やシステムについて、経営者が細かな実務や技術まで理解する必要はありません。経理処理の方法や、システムの仕様を一つひとつ決めるのは、管理部門責任者や社内SE・システム担当者の役割です。

一方で、専門的な内容だからといって、すべてを担当者に任せてよいわけではありません。

前回は、担当者が真面目で専門知識を持っていても、その専門領域から見た「正しさ」が、会社全体の最適解になるとは限らないことを取り上げました。経営者に必要なのは、担当者の仕事を代わりに行うことではありません。専門家でなくても、経営者として手放してはいけない判断を押さえることです。

私は、特に次の四つが重要だと考えています。

1.何のために変えるのかを決める

最初に経営者が決めるべきことは、管理体制やシステムを変える目的です。

「古くなったから新しくする」「手作業が多いからシステム化する」だけでは、目的として十分ではありません。何を改善したいのかによって、選ぶべき仕組みは変わります。

月次決算を早めたいのか、現場の入力負担を減らしたいのか、在庫を正確に把握したいのか、特定の社員への依存をなくしたいのか。あるいは、顧客別・商品別の採算や在庫の動きなど、経営判断に役立つ情報をタイムリーに得られるようにしたいのか。複数の目的がある場合には、その中で何を優先するのかも決めなければなりません。

目的が曖昧なまま担当者に任せると、管理部門は管理しやすい仕組みを、システム担当者は構築しやすい仕組みを目指します。それは担当者として自然な判断です。だからこそ、「会社として何を実現したいのか」は経営者が示す必要があります。

2.何を優先し、何を諦めるのかを決める

管理やシステムの改革では、すべての要望を同時に満たすことはできません。

現場の自由度を高めれば、データの統一性が下がることがあります。統制を強くすれば、承認や入力の負担が増えます。多くの機能を盛り込めば、費用が増え、操作も複雑になります。短期間で導入しようとすれば、業務の見直しが不十分になる可能性があります。

つまり、管理やシステムの判断には、必ず何らかのトレードオフがあります。

どの機能を採用するかという技術的な判断は担当者に任せられます。しかし、顧客対応の速さ、内部統制、社員の負担、導入費用などのうち、何を優先するかは経営判断です。担当者に最適解を求める前に、会社としての優先順位を明確にしなければなりません。

3.一つの結論だけでなく、選択肢を確認する

担当者から「この方法が最適です」と説明を受けると、経営者は専門的な判断として、そのまま承認しがちです。

しかし、実際には、管理やシステムの問題に唯一の正解があることは多くありません。費用を抑える案、早く導入する案、将来の拡張性を重視する案など、複数の選択肢があるはずです。

経営者が確認すべきなのは、細かな仕様ではなく、ほかにどのような選択肢があったのか、それぞれ何が優れ、何が劣るのか、そして、なぜ今回の案を選んだのかです。

選択肢とその違いが示されれば、経営者は専門家でなくても、経営上の優先順位に照らして判断できます。反対に、一つの結論しか示されなければ、経営者は実質的に「承認するか、しないか」しか選べません。それでは、経営者が意思決定に関与したとは言いにくいでしょう。

4.後戻りできる段階で確認する

経営者が確認する時期も重要です。

最終案が完成し、契約や開発の直前になってから説明を受けても、大きな方向転換は難しくなります。それまで検討してきた担当者への配慮や、スケジュールへの影響もあり、問題を感じても、そのまま進めてしまいがちです。

経営者が確認すべきなのは、すべてが固まった後ではありません。目的を決めた段階、基本方針を選ぶ段階、多額の費用をかける前など、まだ方向を変えられる時点で確認する必要があります。

進捗報告を頻繁に受けることが重要なのではありません。細かな作業を監視すれば、かえって担当者の自主性を損ないます。重要なのは、経営判断が必要な節目をあらかじめ決め、その段階で立ち止まることです。

任せるのは「作業と専門判断」、残すのは「経営判断」です

経営者が管理やシステムに詳しくないことは、問題ではありません。専門知識を持つ担当者に任せることも、組織として当然です。

ただし、目的、優先順位、選択肢、重要な節目の判断まで手放してしまえば、経営者の意図とは違う仕組みが出来上がる可能性があります。

担当者には、調査、設計、実務上の検討、専門的な判断を任せます。そのうえで、会社として何を目指し、何を優先し、どの案を選び、いつ前に進むのかは、経営者が判断します。

経営者に必要なのは、専門家と同じ答えを持つことではありません。専門家の提案を、経営の視点から判断することです。

ここまで、管理やシステムを人に任せる「委任型」の経営者について考えてきました。次回からは、自ら学び、自ら判断する「主導型」の経営者が陥りやすい問題を取り上げます。