経営者は、管理とシステムにどう関わるべきか~第2回 「任せること」と「任せきること」は違う

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管理やシステムを、自分より詳しい社内の人材に任せることは、経営者として合理的な判断です。経営者があらゆる分野の専門家になることはできません。適切な人材に権限を与え、その知識や経験を活用することは、組織を動かすうえで欠かせません。

しかし、「任せること」と「任せきること」は違います。

管理部門責任者や社内SE・システム担当者に任せた結果、経営者が期待していたものとは違う管理体制やシステムが出来上がってしまうことがあります。しかも、その担当者が怠けていたわけでも、能力が低かったわけでもありません。むしろ、真面目で専門知識のある人に任せたときにも起こります。

なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。

実務に詳しいことと、経営を理解することは同じではありません

管理部門責任者は、経理、人事、総務などの実務に精通しています。社内SEやシステム担当者は、システムの機能やデータ、運用上の制約を理解しています。いずれも会社にとって重要な専門性です。

ただし、担当分野に詳しいことと、会社全体の経営を理解していることは同じではありません。

例えば、管理部門は、間違いを防ぎ、統制を強くすることを重視する傾向があります。その結果、承認手続きや確認項目が増え、現場の事務負担が重くなることがあります。一方、システム担当者は、仕様を統一し、例外を減らし、安定して運用できることを重視します。その結果、実際の営業や製造の柔軟性が失われることがあります。

それぞれの判断は、自分の担当分野から見れば正しいものです。しかし、会社全体から見たときにも最適とは限りません。

任せた相手は、自分の担当領域から問題を見ます

会社の問題には、複数の部門が関係しています。

受注業務を例にすると、営業部門は入力を簡単にしたいと考えます。管理部門は承認や証拠を残したいと考えます。システム担当者はデータ形式を統一したいと考えます。経営者は、顧客対応の速さ、内部統制、管理情報、コストなどを総合して判断しなければなりません。

ところが、管理やシステムを一人の責任者に任せきると、その人が見ている範囲で問題と解決策が定義されます。管理部門に任せれば管理しやすい仕組みに、システム担当者に任せればシステム化しやすい業務に寄りやすくなります。

ここで難しいのは、担当者本人には「部分最適を進めている」という意識がないことです。会社のために最善を尽くしているからこそ、自分の専門領域における正しさを、会社全体の正しさと捉えてしまうことがあります。

経営者に届く時点では、すでに「結論」になっています

もう一つの問題は、経営者への情報の届き方です。

経営者は多忙です。そのため、担当者からは「この方法が最適です」「このシステムが必要です」と、整理された結論が報告されます。しかし、その結論に至るまでに、どのような選択肢があり、何を優先し、何を諦めたのかまでは、十分に共有されないことがあります。

経営者が説明を受けるころには、担当者間の検討が進み、事実上、方向性を変更しにくくなっている場合もあります。経営者は専門知識が少ないと自覚しているため、「担当者がそう言うなら」と承認します。

こうして、形式上は経営者が決裁していても、実質的な意思決定は担当者に委ねられます。

問題が見えるのは、費用をかけた後です

管理体制や業務システムの問題は、決定した時点では見えにくいものです。

新しい管理ルールは、導入直後には「統制が強化された」と評価されるかもしれません。新しいシステムも、予定どおり稼働すれば、プロジェクトは成功したように見えます。

しかし、しばらくすると、入力や承認に時間がかかる、現場がシステム外で管理を始める、必要な経営情報が取り出せない、改修費用が増え続けるといった問題が表面化します。その段階では、すでに多くの時間と費用が投入され、簡単には元に戻せません。

経営者が「なぜ、このような仕組みにしたのか」と尋ねても、担当者は「承認を受けて進めました」と答えるでしょう。担当者に任せたつもりの経営者と、経営者の承認を得たつもりの担当者との間で、責任の所在も曖昧になります。

問題は「人」よりも「任せ方」にあります

こうした失敗が起きると、担当者の能力不足が原因だと考えがちです。しかし、必ずしもそうではありません。

管理部門責任者や社内SEに、会社全体の視点で判断することまで求めながら、その判断基準や経営上の優先順位を伝えていなければ、経営者の意図とずれるのは不思議ではありません。また、途中の検討過程を確認せず、最後の結論だけを承認する形では、方向修正の機会も失われます。

任せることが問題なのではありません。経営者が関与すべき部分まで含めて、任せきってしまうことが問題なのです。

では、経営者は何を担当者に任せ、どの部分には自ら関与すべきなのでしょうか。次回は、委任型の経営者が押さえておくべき「任せ方の原則」について考えます。