請求書の基本:日本のビジネスで使われる4つの主要様式とその流れ

日本における請求書の4つの様式

請求書は会社の売上に関わる重要なものです。日本では、商慣習的に大きく4つの様式に分類されます。これらの特徴を理解することで、自社にあった請求書を選択できます。なお、4つの様式の名称は、当事務所が便宜的につけたものです。

1. 都度請求書

都度請求書は、個別の売上毎に発行される様式です。これはスポット取引や、単発的な売上に適しています。たとえば、イベント事業や個別受注に充分に対応できますが、売上量が増えると発行作業が大変になることがあります。

2. 売上請求書

売上請求書は、継続取引先に対し、締め日に一括して売上を集計して発行する様式です。請求書の記載金額は、締め日までの当月売上の合計金額です。その際、売上明細の記載が欠かせません。最もよく使われている様式です。

3. 売掛金請求書

売掛金請求書は、前月の売掛金残高に、当月売上金額を加算し、当月入金金額を差し引いた、当月の売掛金残高をして発行する様式です。入金条件が長い場合によく使用されます。当月売上金額の内訳として、当月の売上明細があるのは「売上請求書」と同じです。

4. 売掛金明細請求書

売掛金明細請求書は、「売掛金請求書」とほぼ同じ内容です。異なる点は、明細が売上明細ではなく、売掛金明細(当月の売上明細+未入金・未消込の前月の売上明細)であることです。この様式は、取引先との違算確認に適していますが、発行の作業負荷は重いです。

販売管理プロセスと4つの請求書様式

販売管理プロセス(債権管理を含む)には、主に「受注」「出荷」「売上」「集計」「入金」「消込」のプロセスがあります。請求書の様式によって、請求書を発行できるタイミング(どこまでのプロセスが完了すれば請求書を発行できるのか)が異なります。

都度請求書のプロセス

都度請求書は「受注」「出荷」「売上」の3ステップで完了します。出荷時に金額が確実であれば、その時点で請求書発行も可能です。

売上請求書のプロセス

売上請求書は「受注」「出荷」「売上」「集計」の4ステップを要します。締め日や月末に発行が集中するため、効率的な請求データの集計が不可欠です。

売掛金請求書のプロセス

売掛金請求書は「受注」「出荷」「売上」「集計」「入金」の5ステップを要します。当月の入金合計額を把握し、当月の売掛金残高が確定したら、請求書を発行します。

売掛金明細請求書のプロセス

売掛金明細請求書は「受注」「出荷」「売上」「集計」「入金」「消込」のすべてを完了している必要があります。当月の入金額を元に、前月の売上明細を1つ1つ消込みして、当月の売掛金明細を確定したうえで、請求書を発行します。

請求書発行の負荷軽減と早期化の対策

請求書発行の負荷軽減と早期化を図るためには、使用する請求書の様式に合わせて、販売管理プロセスや販売管理システムを改善します。

受注・出荷・売上・集計

  • 問題: データ化が遅い、精度が低い
  • 対策: 販売管理システムの導入、データ処理の日次化

入金

  • 問題: 取引先の特定が遅い
  • 対策: 経理担当者の販売管理システムの直接入力、バーチャル口座

消込

  • 問題: 入金と明細の紐づきが不明、違算
  • 対策: 違算防止の対策、自動消込機能