多くの経営者は、ここ数年で何かがおかしいと感じているのではないでしょうか。
- 採用をしても人が集まらない。
- 原材料が値上がりする。
- 電気代が上がる。
- 物流費も上がる。
そして、一度上がったコストはなかなか元に戻らない。これまでの経営環境では、こうした値上がりは一時的なものと考えられていました。しかし、私はそうではないと考えています。
私たちは今、「安い時代の終わり」の入り口に立っているのではないでしょうか。
日本企業は「安いこと」を前提に成長してきた
戦後の日本企業は、非常に恵まれた環境の中で成長してきました。必要な原材料は世界中から調達できる。エネルギーは比較的安価に入手できる。労働力は豊富に存在する。金利は低く、資金調達も容易である。
こうした環境のもとで、多くの企業は次のような戦略を取ってきました。
- できるだけ安く作る
- できるだけ多く売る
- できるだけ規模を拡大する
つまり、「量」を追求する経営です。この戦略は長い間、非常に有効でした。売上を伸ばし、生産量を増やし、シェアを拡大することが成長そのものでした。
ところが、世界は変わり始めている
近年、多くの業界で共通した現象が起きています。人手不足です。
製造業でも、建設業でも、物流業でも、サービス業でも、人材確保が大きな経営課題になっています。さらに、エネルギーや原材料も不安定になっています。
地政学的リスク、供給網の分断、資源争奪の激化などにより、「必要なものを必要な時に安く調達できる」という前提が揺らぎ始めています。
たとえば化学製品や包装資材の原料となるナフサは、多くの産業の土台を支える存在です。
もしその供給が不安定になれば、単に石油業界だけの問題ではありません。製造、流通、小売まで幅広い影響を受けます。
私たちが当たり前だと思っていた供給体制は、決して当たり前ではなくなりつつあるのです。
売上よりも「何に資源を使うか」が重要になる
安い時代には、売上を伸ばすことが最優先でした。しかし、資源が限られる時代には考え方が変わります。
人が足りない。材料が足りない。設備投資も簡単ではない。そんな状況では、すべての仕事を引き受けることができません。
すると経営者に求められるのは、「何をやるか」ではなく、「何をやらないか」を決めることになります。
どの顧客に販売するのか。どの商品に注力するのか。どの事業から撤退するのか。
限られた経営資源をどこに配分するのか。これが重要なテーマになります。
量の経営から質の経営へ
私は、これからの経営は「量の経営」から「質の経営」へ移行すると考えています。
売上高より利益率。顧客数より優良顧客。生産量より付加価値。規模より収益性。
もちろん売上は重要です。しかし、売上だけを追い続ける経営は難しくなります。限られた資源をどこに投入すれば最も価値を生み出せるのか。
その判断が企業の競争力を左右する時代になるでしょう。
次回予告
第2回では、日本企業が長年続けてきた「量を追う経営」がなぜ合理的だったのか、そしてなぜ今その前提が崩れつつあるのかを掘り下げていきます。
かつて成功の方程式だった経営手法は、これからも有効なのでしょうか。