はじめに
営業支援システムや受発注管理システムは、本来、業務を効率化し、営業担当者が付加価値の高い活動に集中できるようにするためのものです。ところが実際には、システムの存在がかえって現場の負担となり、効率を阻害している例が少なくありません。これは特定の業界や企業に限らず、多くの現場で共通して見られる現象です。
入力作業の負担と二重入力
営業担当者が最も強く感じるのは、入力作業の煩雑さです。製品仕様や数量、配送先など細かい項目を繰り返し入力させられ、同じ情報を複数の欄に書き込まなければならないケースも少なくありません。さらに、入力の元になる情報がメール、Excel、紙の資料などに分散しており、入力よりも「探して転記する」ことに時間がかかる状況が生まれています。
システムと実務の乖離
システムの設計が実務に合っていないこともよくあります。ほとんど利用されない機能や入力欄が存在する一方で、実際に必要な情報はシステム外でExcelや紙に頼らざるを得ない。このように不要なものが残り、必要なものが欠けているアンバランスさが、システムと現場の乖離を生んでいます。
帳票と金額計算の人力依存
見積や請求、納品資料を作成する場面でも、システムの出力をそのまま使えず、Excelや電卓を使った再計算が常態化している企業は多いものです。帳票に余計な情報が含まれていたり、逆に必要な明細が不足していたりするため、必ず人手による加工が必要になります。結果として、システムが業務を最後まで完結させられず「最後の仕上げは人力」という状態が固定化されています。
検索性の低さと参照の不便さ
過去案件を検索する機能があっても、実際にはうまく活用できないケースも少なくありません。品名や担当者の入力ルールが統一されていないため、検索してもデータが見つからない。全角・半角や入力方法の違いが障害になり、前任者の登録データをうまく引き継げない。このように「検索はあるが、見つからない」という問題は、多くの企業で繰り返されています。
UI・操作性・安定性の問題
システムの使い勝手に対する不満も根強いものがあります。入力欄が狭い、文字数制限が厳しい、画面遷移が多いなど、ユーザーにとって直感的でないUIがストレスを生みます。さらに、入力中にタイムアウトやセッション切れが起こり、作業が中断することもあります。営業担当者が「システムに気を使いながら業務を行う」状態は、本来の目的と逆行しています。
改善の方向性
こうした課題を解決するために必要なのは、大規模なシステム刷新では必ずしもありません。入力や検索の改善、金額計算や帳票出力の自動化、UIや安定性の強化といった部分的な改修だけでも、業務効率は大きく向上します。小さな改修で現場のストレスを取り除けば、営業担当者は本来の顧客対応や提案活動に集中できるようになります。
まとめ
営業システムは「業務効率化の道具」であるはずなのに、現場の声に耳を傾けないと「事務負担の増加要因」へと転じてしまいます。経営者や幹部が注目すべきは、大きな刷新ではなく、現場に即したピンポイントの改善でどこまで成果を上げられるかという視点です。二重入力をなくし、帳票や金額計算を自動化し、検索や操作性を改善する。これらはどの企業にも共通する「小さな投資で大きな効果を得られる領域」です。