「15年使える」はもう古い?基幹システムに求められる新たな視点とは

10年以上にわたり稼働してきた基幹システムが、突如として「販売終了」「サポート終了」となる──。こうした事態に直面し、「せっかく多額の投資をしたのに、なぜ10年で終わるのか?」と疑問を持つ経営者の声をよく耳にします。

かつて、基幹システムは“15年使って当たり前”と考えられていました。しかし、今日ではこの常識が大きく揺らいでいます。中堅企業においても、システム戦略を再定義すべきタイミングが来ているのです。

なぜ10年で終わるのか?背景にある3つの変化

  1. 技術進化の加速 クラウド、API、AIといった新技術の進化が速く、10年前の技術では現在の業務要件に対応しきれないことが多くなっています。
  2. ベンダービジネスの構造変化 ソフトウェアベンダーの多くが、ライセンス販売からサブスクリプションモデルに移行。旧製品の保守・改修よりも、新サービスへの移行を促進する方向に舵を切っています。
  3. 法令・業務環境の変化 電子帳簿保存法の改正やインボイス制度、働き方改革など、制度対応のスピードも問われる時代に。これに柔軟に対応できる設計が求められています。

長期利用=コストメリットではない時代

過去には「長く使えば元が取れる」という考えが主流でした。しかし、技術的陳腐化や属人化、保守人材の不足といったリスクが顕在化する中、「長く使い続けること」自体がコスト増要因になるケースも増えています。

むしろ、柔軟に再構築できる設計思想、アップデートしやすいシステム構成こそが、将来的な投資対効果を高めるカギとなります。

これからの基幹システム戦略 〜進化を前提に設計する〜

以下の3点が、今後の基幹システム設計における柱になります。

  1. 柔軟性を備えたアーキテクチャ
    • クラウド活用やAPI連携、モジュール構成など、特定ベンダーに依存しない仕組みを前提とする
  2. データ資産を中心に据える設計
    • データを自社の資産として分離・保管し、アプリケーションとは切り離して管理
  3. 進化を前提にした体制と運用
    • 「導入して終わり」ではなく、5年ごとの定期見直しと小規模アップデートを続ける体制を構築

リプレイス=後ろ向き ではなく、進化のチャンス

突然のベンダー撤退はたしかに痛手です。しかしそれは、現状の業務やシステムの在り方を見直す貴重な機会でもあります。

変化の激しい時代にあっては、永続的に使えるシステムではなく、「いつでも変えられるシステム」を持つことこそが、企業競争力の源泉となります。

これからの基幹システム戦略は、「安定性」と「進化性」を両立する発想への転換が不可欠です。10年後も強くしなやかな経営を支えるために、いま一度、自社のIT基盤の在り方を問い直してみてはいかがでしょうか。