ここまで「安い時代の終わり」というテーマで、13回にわたって考えてきました。
人手不足。原材料不足。エネルギーコストの上昇。物流制約。インフレ。こうした変化によって、企業経営の前提条件は大きく変わりつつあります。
私は、この変化を一言で表現するなら、「豊富な時代から希少な時代への移行」だと考えています。
そして、その変化は一時的なものではなく、これからの経営環境を形作る大きな潮流になるでしょう。
では経営者は何を準備すべきなのでしょうか。シリーズの最終回として考えてみたいと思います。
まず前提を変える
経営の第一歩は現実を正しく認識することです。
これまで多くの企業は、人は採用できる。材料は買える。エネルギーは安い。物流は機能する。という前提で経営してきました。
しかし今後は、人が採用できないかもしれない。材料が手に入らないかもしれない。コストは上がるかもしれない。供給が止まるかもしれない。という前提で考える必要があります。
悲観的になる必要はありません。ただ、前提条件が変わったことを認識する必要があります。
売上ではなく利益構造を把握する
これからの時代において、「売上が増えている」だけでは安心できません。
重要なのは、どこで利益を生み、どこで利益を失っているのかを理解することです。
顧客別利益。商品別利益。事業別利益。案件別利益。こうした情報を把握している企業ほど、変化に対応しやすくなります。
利益構造が見えなければ、正しい資源配分はできません。
顧客を見直す
すべての顧客を同じように扱う時代は終わりつつあります。
限られた人材。限られた時間。限られた設備。それらを誰に使うのか。
経営者は選択しなければなりません。どの顧客が利益を生んでいるのか。どの顧客が自社の強みを活かせるのか。どの顧客と長期的な関係を築くべきなのか。
顧客戦略は、ますます重要になります。
KPIを見直す
もし経営会議で見ている数字が、売上高。受注件数。生産数量。だけだとしたら、一度立ち止まって考える必要があります。
本当に知るべきなのは、どれだけ価値を生み出しているかです。
利益率。顧客別利益。一人当たり利益。時間当たり利益。こうした指標が重要になります。
数字が変われば、行動も変わります。行動が変われば、経営も変わります。
情報基盤を整える
どれだけ優れた経営者でも、情報がなければ正しい判断はできません。
原価情報。在庫情報。顧客情報。生産情報。これらを経営判断につながる形で把握できる仕組みが必要です。
ERPや業務システムの役割も、単なる効率化から、意思決定支援へと変わっていきます。
情報は経営資源です。そしてこれからは、情報を持つ会社が強くなります。
「何をやるか」より「何をやめるか」
最後に、最も重要なことをお伝えしたいと思います。
これからの時代の経営は、拡大の経営ではありません。選択の経営です。
どの商品に集中するのか。どの顧客に集中するのか。どの事業を伸ばすのか。
そして、何をやめるのか。何を捨てるのか。何を引き受けないのか。その判断が企業の未来を決めます。
安い時代の終わりは、成長の終わりではない
ここまで読んでいただいた方の中には、少し暗い話だと感じた方もいるかもしれません。
しかし私は悲観していません。安い時代が終わることと、成長が終わることは違います。
むしろ、本当に価値を提供できる企業が評価される時代になるとも言えます。
利益より売上。価値より価格。選択より拡大。
そうした時代から、利益より価値。規模より収益性。拡大より集中。
そんな時代へ移行していくのだと思います。
量の経営から資源配分の経営へ
このシリーズを通じてお伝えしたかったことは、一つです。
経営の本質はますます、資源配分になっていくということです。
人。時間。設備。資金。原材料。情報。これらの限られた資源をどこに投入するのか。
その判断が企業の競争力になります。安い時代は終わりつつあります。
しかし、価値を生み出す時代は終わりません。むしろこれからが、本当の経営の時代なのかもしれません。
シリーズ完結
安い時代の終わり
第1回〜第14回をご覧いただきありがとうございました。このシリーズが、これからの経営を考える一つのきっかけになれば幸いです。