現代の多くの企業では、財務会計と管理会計を一致させる運用が一般的です。このしくみは、基幹システムから財務会計システムに自動仕訳を流し、手入力が必要な振替伝票は後から入力する形で成り立っています。そして、月次決算が確定してから管理会計システムにデータを流すという流れです。しかし、このような運用にはいくつかの問題点が潜んでいます。
財管一致の問題点
問題点1: 管理会計の遅延
財務会計の月次決算が完全に確定するまで、管理会計データをシステムに流すことができません。そのため、管理会計の情報は翌月中旬以降でないと確認できないことが多いです。このタイムラグは、迅速な意思決定が求められる現代の経営環境において致命的です。
問題点2: 現場担当者の負荷増加
管理会計を迅速に提供するため、財務会計の締め切りを厳しく設定するケースがあります。しかし、これにより現場の営業部や購買部が月末月初に事務作業に追われ、本来の業務が圧迫されるという事態が発生します。
問題点3: 経理部門の負荷増加
財務会計と管理会計を一致させるために、仕訳の詳細化が必要になります。例えば、案件別や担当者別に明細を入力し、これをチェックする作業が追加されます。このような手間が経理部員の負担を増大させています。
部分的な改善案とその限界
一部の企業では、基幹システムから管理会計システムに直接データを流し、そこから財務会計システムに自動仕訳を流すという方法を採用しています。この方法により、月中でも管理会計の一部情報を確認することが可能になります。
しかし、このアプローチには以下のような限界があります:
- 手入力の仕訳が含まれないため、管理会計情報が不完全。
- 明細入力の手間が依然として残るため、現場や経理部門の負荷が軽減されない。
結局のところ、情報の不完全さと手作業の負担が残り、本質的な解決には至りません。
財管一致の本質的な課題
財管一致のしくみは、財務会計と管理会計の両方に矛盾を生じさせています。
- 財務会計は管理会計のために仕訳を細分化する必要があります。
- 管理会計は財務会計のために1円単位の正確性を求められます。
この「細分化」と「正確性」の両立が、現場と経理部門の負担を増大させる原因となっています。
真の解決策: 柔軟で効率的な仕組みへの転換
本質的な解決には、財務会計と管理会計を完全に一致させる運用から脱却し、それぞれの役割に応じた柔軟なシステム設計が求められます。
アプローチ1: データのリアルタイム収集と分析
基幹システムから直接管理会計システムにデータをリアルタイムで流し、必要に応じて財務会計用のデータに加工する仕組みを構築します。これにより、管理会計情報を早期に取得可能になります。
アプローチ2: 自動化と負荷分散
AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用して仕訳作業を自動化し、現場や経理部門の負担を軽減します。特に繰り返し発生する仕訳作業の効率化により、人的リソースをより付加価値の高い業務に振り向けることが可能です。
アプローチ3: 財務会計と管理会計の役割分担
財務会計は法令遵守と正確性に特化し、管理会計は迅速な経営判断に特化するよう役割を明確化します。この役割分担により、両システムがそれぞれの目的に応じた柔軟な運用を実現します。
結論
財務会計と管理会計を一致させることは、シンプルで一見効率的に思える反面、多くの課題を内包しています。本当に必要なのは、両者を区別しつつ、相互に補完し合う仕組みを構築することです。迅速かつ正確な情報提供を可能にするシステム設計を通じて、企業全体のパフォーマンスを最大化しましょう。