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はじめに
システム開発の成功は、企業の競争力を高める上で不可欠な経営課題です。しかし、成功したシステム開発の背後には、しっかりとしたシステム企画があることが、しばしば見過ごされています。本記事では、システム開発の流れを確認しながら、システム企画の重要性について解説していきます。
システム開発の流れ
システムを開発するステップは、大きく企画と開発の2つのフェーズがあります。
システム企画:成功の土台を築く
1 課題分析
現状の業務プロセスやシステムの問題点を明確にし、それを解決するためのシステム開発の目的を設定します。ここで的確な課題を抽出することが大切です。
2 システム構想
課題分析の結果をもとに、システムのグランドデザイン、具体的には主要機能、モジュール構成、他システム間とのデータ連携などを検討します。この時、今回開発対象となっているシステムだけではなく、会社全体のシステム構想を描くことがポイントです。
3 業務要求の整理
次に、システムが満たすべき業務要求を整理します。利用者や関係者からの要望を収集し、システム要件を明確化します。
4 RFPと選定
最後に、システム開発の要件をまとめたRFP(リクエスト・フォー・プロポーザル)を作成し、開発パートナーやパッケージを選定します。
システム開発:企画を具現化する
1 要件定義
企業と開発パートナーが協力して、業務要求をもとに、システム開発のための詳細な要件を定義します。
2 設計
ここからは開発パートナーの仕事です。システムのアーキテクチャやデータベース構造、画面や出力帳票などを設計します。
3 開発
設計に基づいてプログラマーがコードを書き、システムの機能を実装していきます。
4 検証
機能や品質など、システムが要件を満たしているかを確認します。問題無ければ、環境を構築して必要なデータを移行し、本稼働です。
システムの成否は、企画で決まる
システム企画は、開発プロジェクトの目的や方向性を明らかにし、実際のシステム開発の基盤を構築するための重要なプロセスです。
ただし、システム企画は社内メンバーが担当するタスクであり、ITリテラシーが高いメンバーが必ずしも選ばれるわけではありません。また、優秀なメンバーほど日常業務が多忙で、企画に十分な時間を割けないことが往々にしてあります。
システム企画が不十分で議論が尽くされないままシステム開発に進むと、要件定義が何度も変更されます。「要件を変更したい」「この機能の検討が漏れていた」「他部門から意見がきて新しい機能を追加したい」などの問題が発生します。
要件定義の変更や手戻りがあると、設計・開発・検証の開発プロセスに大きな影響が生じ、システムの運用が遅れたり、予算超過になることが一般的です。
それでも開発が完了すればまだ良い方ですが、最悪の場合、開発が中止されることもあります。実際、有価証券報告書を見ると、「システム廃棄損」や「次期システム開発中止に伴う損失」などの記載が散見されます。
よく「システム開発の成否は要件定義にかかっている」と言われますが、それは誤りです。要件定義は、企業が決定した業務要求を具体化する作業に過ぎません。システム開発の成否を決定するのは、要件定義に至る前のシステム企画です。
強固な構想力で成功を引き寄せる
システム企画の成功には、強固な構想力が不可欠です。構想力とは、問題解決に向けた全体的な業務プロセスとシステムのビジョンを描く力、およびその実現のための具体的な戦略を立てる能力です。
業務プロセスへの理解
開発対象業務だけでなく、関連する業務プロセスや課題も包括的に理解することで、解決すべき問題点を把握し、適切なシステム構想を作成できます。
基幹業務(販売、購買、在庫、生産など)は、最終的に会計につながります。適切な仕訳・会計処理を意識したデータ管理が重要です。
また、ユーザーが社内だけであっても、受注・発注処理、取引条件の登録・変更、文書やデータのやりとりなど、取引先の視点に立ってシステムや業務を考慮します。
システムに関する一般的な知識
システムは業務単位で主要機能が決まっています。市販パッケージでは、業務単位でモジュールが分かれており、それぞれにグレードがあります。グレードは、想定されるユーザー数、同時アクセス数、データ量、必要な機能レベルに応じて選択されます。
これらの知識が欠けている場合、システム企画はうまく進みません。求める機能を単にリストアップし、最も安価な提案を選ぶのは、目を閉じて崖から飛び降りるようなものです。
知識が不足している場合は、自分で情報を収集し、研究することが重要です。
プロジェクト構成
「システム企画」と「システム開発」は、異なるプロジェクトとして扱うべきです。システム開発という観点では一つのプロジェクトとも言えますが、企画と開発ではプロジェクトの体制が大きく異なります。
例えば、システム企画では目的がシステム構想の作成と業者選定、意思決定者は社長、主導者は経営企画部です。一方、システム開発の目的はシステムの開発と稼働、意思決定者は情報システム担当役員、主導者は情報システム部です。
実際には、システム企画を情報システム部に任せる企業も多いですが、正直なところ、情報システム部には負担が大きすぎます。全社的な業務改革を実行できるのは経営責任者であり、部門間の利害関係を調整できるのは経営全般を統括する部署だけです。
システム企画を成功させるためには、業務プロセスの理解、システムに関する一般的な知識、適切なプロジェクト体制が重要です。これらの要素を充実させることで、効果的なシステム企画を実現し、システム開発の成功につなげることができます。
まとめ
システム開発において、企画は非常に重要な役割を果たします。システムを開発するステップは、大きく企画と開発の2つのフェーズがあります。
システム企画は、成功の土台を築くためのフェーズであり、課題分析やシステム構想、業務要求の整理、RFPと選定などが含まれます。一方、システム開発は、企画を具現化するためのフェーズであり、要件定義や設計、開発、検証などが含まれます。
システム企画が不十分だと要件定義の変更や手戻りが発生し、稼働遅延や予算超過、最悪の場合は開発中止に至ります。
システム企画の成功には、問題解決に向けた業務プロセスとシステムのビジョンを描く構想力、業務プロセスとシステムに関する一般的な知識、適切なプロジェクト体制が必要です。これらの要素を充実させることで、効果的なシステム企画を実現し、システム開発の成功につなげることができます。